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…そして桃花は日本での仕事を終えて、パリへと戻って行った。
「…桃花謝ってたよお前に酷い事言ったって」
「…そんな…謝らなくたってもういいのに」
正直いつこの事を渚に伝えようかと思っていたけれど…まさか渚の方から桃花のことを聞いてくるとは思わなかった。
「あとは?何か気になることない?」
「うん、もう大丈夫」
そう言って心底ほっとした顔で笑いながら、ケーキを堪能する渚。
…ホント…いつ見ても飽きない、この笑顔。
「恭ちゃんも一緒に食べよ?すっごい美味しいから」
「…それ持ち帰って家で食お」
「えっなんで?ここで食べちゃおうよ」
「…早く帰ってさっきのキスの続きがしたいから」
「なっ…何言って……」
「したくないの?渚は」
いつもの照れた顔を見れるだけでも満足だけど。
今日は愛しい彼女が生まれてきてくれた日。
…時間をかけてたっぷりと愛したい。
「…私が断らないのわかってるくせに。…ずるいよ恭ちゃん」
俺にそんな文句を言いながらも、ケーキを包んでもらうためにウェイターを呼ぶ。
こういうときなかなか素直じゃない渚だけど、その顔を見ればわかってしまう。
俺を見つめるその瞳が、いつでも俺を好きだと言ってくれている気がする。
…このまま一緒に同じ家に帰れることが、何よりも贅沢なことだと実感した1日だった。
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