甘い生活

17/17
17810人が本棚に入れています
本棚に追加
/493ページ
…そして桃花は日本での仕事を終えて、パリへと戻って行った。 「…桃花謝ってたよお前に酷い事言ったって」 「…そんな…謝らなくたってもういいのに」 正直いつこの事を渚に伝えようかと思っていたけれど…まさか渚の方から桃花のことを聞いてくるとは思わなかった。 「あとは?何か気になることない?」 「うん、もう大丈夫」 そう言って心底ほっとした顔で笑いながら、ケーキを堪能する渚。 …ホント…いつ見ても飽きない、この笑顔。 「恭ちゃんも一緒に食べよ?すっごい美味しいから」 「…それ持ち帰って家で食お」 「えっなんで?ここで食べちゃおうよ」 「…早く帰ってさっきのキスの続きがしたいから」 「なっ…何言って……」 「したくないの?渚は」 いつもの照れた顔を見れるだけでも満足だけど。 今日は愛しい彼女が生まれてきてくれた日。 …時間をかけてたっぷりと愛したい。 「…私が断らないのわかってるくせに。…ずるいよ恭ちゃん」 俺にそんな文句を言いながらも、ケーキを包んでもらうためにウェイターを呼ぶ。 こういうときなかなか素直じゃない渚だけど、その顔を見ればわかってしまう。 俺を見つめるその瞳が、いつでも俺を好きだと言ってくれている気がする。 …このまま一緒に同じ家に帰れることが、何よりも贅沢なことだと実感した1日だった。
/493ページ

最初のコメントを投稿しよう!