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「…これで俺とお前は同じ立場だろ。…悪いけど美波のことは諦めて。…コイツは俺の女だってずっと前から決まってんだよ」
…工藤にそう言い放った日向は、そのまま沢の手を握り締めて…沢を連れて店から立ち去って行った。
…嵐のような数分間。
「…あー…もう…本気出したあの人に俺が勝てるわけねーじゃん……せっかく捕まえたと思ったのに…」
…うなだれて嘆く工藤。
会社の仲間の前で失恋なんて…哀れすぎる。
「もう恭平さん…今日は酔いつぶれるまで飲むから付き合って下さいね絶対!」
「…とことん付き合ってやるよ」
仕方ない、哀れな後輩を慰めてやるか。
…そのとき店の入口の方から、日向がこっちに戻ってくるのが見えた。
…なんか俺の方に向かってくるんだけど。
周りに聞こえないくらいの声で、戻ってきた日向が俺に囁いた。
「…お前が今1番会いたい子、来てるよ店の前に」
………え?
「俺の恩人なんだよね。だから早く行ってやれよ外寒いんだから。じゃーねー」
…上機嫌で手を振ってまた店を出て行く日向の背中を見ながら…今アイツが言ったことをもう一度思い出す。
……俺が会いたい人なんて…渚しかいない。
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