愛しいキミ

17/21
前へ
/493ページ
次へ
「…これで俺とお前は同じ立場だろ。…悪いけど美波のことは諦めて。…コイツは俺の女だってずっと前から決まってんだよ」 …工藤にそう言い放った日向は、そのまま沢の手を握り締めて…沢を連れて店から立ち去って行った。 …嵐のような数分間。 「…あー…もう…本気出したあの人に俺が勝てるわけねーじゃん……せっかく捕まえたと思ったのに…」 …うなだれて嘆く工藤。 会社の仲間の前で失恋なんて…哀れすぎる。 「もう恭平さん…今日は酔いつぶれるまで飲むから付き合って下さいね絶対!」 「…とことん付き合ってやるよ」 仕方ない、哀れな後輩を慰めてやるか。 …そのとき店の入口の方から、日向がこっちに戻ってくるのが見えた。 …なんか俺の方に向かってくるんだけど。 周りに聞こえないくらいの声で、戻ってきた日向が俺に囁いた。 「…お前が今1番会いたい子、来てるよ店の前に」 ………え? 「俺の恩人なんだよね。だから早く行ってやれよ外寒いんだから。じゃーねー」 …上機嫌で手を振ってまた店を出て行く日向の背中を見ながら…今アイツが言ったことをもう一度思い出す。 ……俺が会いたい人なんて…渚しかいない。
/493ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17837人が本棚に入れています
本棚に追加