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『お菓子、忘れんなよ』
「……」
『おーい』
ベッドの上が海になって、ひつじがゆらゆら泳いでる。
「持っていきます」
『何しようか』
「なんでも楽しいです」
私が言うと、馬木くんは短く息を吐いて笑う。
『DVD借りとくから、それ観ながら晩飯食う?』
「じゃ、じゃあ私、ご飯持っていきます」
『え、持ってきてくれんの?』
「あ――……ごめんなさい。月曜は、お母さんが仕事終わるの早いって言ってたから、ご飯作らなくていいんでした」
『なら、俺んちで作ってよ。カレー食べたい。今、お腹がカレー気分』
「い、今なんじゃないですか」
じゃあ明後日。はい。おやすみ。おやすみなさい。
静かに電話が切れると、携帯を持っている手を膝の上に下ろして、正座したまま真横に倒れる。
――ポスン
ずっと正座してたから、足が痺れた。
でも、痺れるくらい電話で話してたんだって思えば、じんじんするこの痛みでさえ愛しく思えた。
「フフ、痛い……」
月曜日。馬木くんの家で、カレーを作ることになりました。
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