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「あれ……誰?」
夜の公園。
馬木くんの落ち着いた声が、私の鼓膜を揺らした。
座ったブランコは揺れていないのに、頭の中がゆらゆら揺れている感覚。
バレた。
馬木くんに、バレた――。
今日は、大学の講義が終わって1人で帰ろうとしていた馬木くんと一緒に帰った。
夜になってお風呂に入る私は、湯船に浸かって、大学の帰り道であったことを思い出していた。
どれくらい浸かってただろう。
浴室の外から『のぼせちゃうよー』とお母さんの声が聞こえて長く入っていたことに気付くと、湯面に顔をつけて、
――ブクブク
苦しくなって、息が続かなくなったところで湯船から上がった。
頬が火照って頭がふわふわする中、自分の部屋に戻ると、テーブルの上で光る携帯が目に付いた。
ドライヤーをかけたばかりの髪がふぁさふぁさ頬をくすぐって、ポリポリ指で掻きながら携帯画面を見つめる。
見覚えのない数字が整列していて、着信を知らせていた。
知らない誰かからの電話に小さな声で出てみると、受話口から聞こえたのは男の人の声。
『堀内?』
それを聞いた瞬間、胸がきゅっとして息が止まった。
聞き覚えのある声に、もしかして、もしかしたらって思うと、声が震えそうになった。
「……馬木くん?」
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