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その夜、自室のベッドの上で正座する私は、携帯を耳に当てた。
「――はい」
電話で話すのは2回目だけれど、まだ全然緊張する。
ううん。多分きっと、ずっと緊張してしまうと思う。
『何してた?』
実際より少し柔らかく聞こえる声。
低い音が鼓膜を揺らして、くすぐったい。
今日もお風呂から出て部屋の扉を開けると、携帯が着信を知らせていた。
受話口の向こうから、馬木くんの声が聞こえる。
「さ、さっきまで下にいて、今部屋に戻ってきました」
答えながら、これはもう、お風呂に入って何かをしたら馬木くんから電話がかかってくるっていう法則があるんじゃないかと考えてしまう。
『そう。あのさぁ』
「は、はい」
『なに。声震えてんだけど』
耳に息が触れたみたい。
馬木くんが笑ったのが分かると、それだけで胸がきゅっと締め付けられる。
顔も見えないのに、すぐ傍にいるみたい。
だって、こんなにドキドキしてる。
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