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『月曜、午後も講義ある?』
「はい、4限まで」
『あ、一緒。終わった後、どっか行かない?』
どっか、行かない?
携帯を耳に当てたまま、瞬きをやめて考える。
どっか、行かない。どっか行かない。
頭の中でくるくる回る言葉。その意味をよく考えた。
「っ――」
『分かった。落ち着け』
驚きが口から出る前に馬木くんの声がして、私は一度深呼吸をする。
「そ、それは……私と馬木くんが、2人でどこかに行くという――」
『そう。ほんとは土日のがゆっくり出来るんだろうけど、俺、昼から晩までバイトだから』
「い、行きたいですっ」
『ん。……どうしようかな、前は堀内の家に行ったから――なんか食べに行く? 俺は飲まないけど』
「あ……私、お酒飲んだことない……」
『うそ。堀内、酔うと面白そうだよね』
馬木くんの声が楽しそうで、私はそれを聞くだけで、布団の上で跳ねてしまいそう。
『なら――ドライブとか』
「ドライブ?」
大きく口を開けて聞き返すと、受話口の向こうが静かになる。
「あ……ご、ごめんなさい。あの、うるさかったですね」
『クッ――』
はっきりと笑い声が聞こえて、耳に当てている携帯をもっと押し付けた。
「う、馬木くん?」
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