ひみつごと

39/40
前へ
/40ページ
次へ
『ごめん。今アンタの顔の周り、汗マークいっぱいなんだろうなって想像したら、思った以上に飛ばしすぎた』 「汗、ですか? お風呂から出たばかりですけど……まだ汗をかく程暑くはないよ?」 『いい、こっちの話』 「えぇ?」 『ほら。月曜、堀内はドライブでいいの? 車借りられるし、もし堀内が行きたいとこあるなら――』 「じゃ、じゃあっ」 『ん?』 「私の家は、どうでしょうか」 『またー?』 またかよ、と低い声で言われたらどうしようかと思ったけど、馬木くんの声は笑い混じり。 「あの、この間のお菓子が、まだ」 『あぁ、そういや約束してたっけ』 「どう、ですか」 沈黙が流れる。 私は何もないテーブルをじっと見つめて、正座待機。 『じゃあさ、うち来る?』 「へ? でも私、出入り禁止じゃ……」 『おいでよ』 「……」 真顔でゆっくり首を回して、枕元に置いてあるひつじの目を見つめる。 家においでって、言われたよ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加