極光の章

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長門家の家族は円状の巨大な掘りごたつを囲み、梢の隣に座る文は、ビスマルクが入れた大紅袍(だいこうほう)と呼ばれる高級岩茶をひとくち含むと、 大和の存在を危険視した言葉を吐き、存在の抹消を提案した。 光の立場、厳密には光と大和の絆を守ったのは、昴と慎だった。 「ふざけんなっ、ババア!」と慎が文に唾を飛ばし、勢いだけの慎に昴が加勢、理詰めと嫌味で弟の砲弾の中身に火薬を加えた。 「お年玉をもうやらないよ」と文が慎に返し、慎が何も言えなくなったとき、梢の唇が開いた。 梢は大和と文の両方を納得させるため、大和霧彦を長門の婿養子に迎えることで、彼を抱き込まんとする旨を提案する。 しかし、大和をよく知る光は、彼は絶対に長門の姓を名乗らないし、むしろ本来の真栄城の姓を取り戻したいと考えていると皆に伝え、 とにかく梢と文の提案がどちらも未然に終わるよう、母と祖母を説得し、慎と昴もまたそれに賛同した。 「……人は一度失ったと思ったものが思わぬかたちで返ってくることに喜びを抱く、ねぇ、鈴」 昴は隣に座る鈴と一緒に葡萄をつまみながら、皆にそう言った。
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