極光の章

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鈴は「あたしもそう思う」と言って、数粒の葡萄を文に差し出した。 文は舌打ちをしながらも、鈴にもらった葡萄を大切そうにつまんだ。 長門家の家族会議はその後3時間にも及び、時刻は22時を刻む。 鈴は明日小学校のため就寝、梢は国外法人とのIP通信による在宅会議を2件キャンセルし、文は6回化粧直しに行った。 最終的には何故かビスマルクも円卓に加わり、梢がシャンパンが飲みたいと言いだしてから、昴も白ワインを飲むようになり、文と慎は同じ日本酒をちびちびと仰ぐなど酒も入った。 鈴が席を外したのも手伝って、さらなる汚い言葉による慎と文との罵倒や、様々な意見が飛び交ったが、光は終始、円卓の下で昴と手を繋いでいた。 そうして、最後まで皆の脳裏に残っていたのは昴の言葉だった。 加えて、長門が奪った可能な限りを、大和に返す。光はそう誓った。 喜んでくれるかどうかはわからないが、さらなる贈り物が、光のなかで芽生えていた。
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