極光の章

47/48
12654人が本棚に入れています
本棚に追加
/352ページ
後学を兼ねて一度屋敷を出ると、横浜市で慎ましい家庭を構築、姉の家族と時々バーベキューなどをしている。 その好奇心と行動力、そして口の悪さは祖父の陣とよく似ていた。 鈴は小学6年生の国語の授業中、ノートの端にこの世にない数学公式をふたつ落書きするも、それを世間に公表することはなく、隣のクラスにいる学年で最も駆けっこが早い男子のことばかり考えていた。 梢のすすめではじめたフィギュアスケートにおいて、何度か大会上位を飾り、世間でそのいじらしい姿が話題になるも、本人は目立つことを嫌い、昴もまたその意思を尊重して、高校進学を機に大きな大会に出ることはなかった。 反面、本人の強い希望で父親である樹とときどき面会をすることもあるが、大抵は父親が涙目になるほどの弁舌を見せ、説教を繰り返している。 幼いながら、その生涯を持って父の罪に向き合おうとしている姿に、昴と梢は互いの肩を抱いて目頭を熱くさせた。 大和……いや、真栄城霧彦は、七色七問の試練をすべて突破したとされ、光と正式に籍を入れる。 彼はその後、公的手続きを踏まえて、本来あるべき父の姓を取り返し、新たな一族のはじまりを担った。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!