極光の章

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その隣には、長門の次女、後の真栄城光、そして霧と光より生まれし、虹春。 ついでにフリスビーと呼ばれる愛犬がいた。 特異な星の下に生まれた家族だから、時に信じられぬ逆境に直面することもあった。 だが真栄城家はその後のほとんどを、家族同士のお喋りと笑顔で過ごした。 ──なにクソという執念で働き、親と喧嘩をしたり、ときに泣いたり。 教師や教授に教えられないことを上司に教えられたり、それを友に教えたり、祖母に教えられたりして。 ああ、この人と結婚をするんだろうな、という相手と巡り合ったり、ときには違ったり、気が付けば結婚をしていたり。 そうして、家を建てたり、犬や猫を飼ったり、車を買ったりして。 親の死に向き合い、社会の荒波や無慈悲な税金に悩まされたり。 ときに離婚の危機に瀕し、互いの未来のために別の道を歩むこともあったり。 それでも新たなパートナーは必ずいたりして、いつの間にか大人になって、友達が減って、でも家族が増えて。 いつかうんざりして伴侶に対して心変わりするその日が来ようと、せめてそれまでは……死んでもし生まれ変わっても、もう一度この人と一緒に、と思える時間をより長く感じて生きることが出来たら、 それが幸せなのだろう。 ……己はそんなことを考えながら、隣で一族を見守る文の頬を撫でていた。
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