エピローグ

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これは大和から己が奪った、大切な記憶の一片。 それと引き換えに、光との未来を認めてやった。 だが、奪われても、彼はやがて光にこの出会いの思い出を訊いて、思いだすだろう。 ──その屋敷、八角につきこれ奇妙。 時刻はもうじき夕暮れを刻み、間もなく海は果汁色となるだろう。 その屋敷の1階の、とある部屋での出来事だった。 その部屋には無数のディスプレイが設置され、屋敷内外の監視カメラの映像を映し出していた。 それらの手前の椅子に、褐色の化粧をして、お仕着せを着た長門光が座っていた。 すると、ひとつのディスプレイが、銀色のセダンを映す。 光はその映像を見つめて、重い吐息を吐いた。 同時に、彼女の背後に、弟が立った。 弟は雪だるまのような体型で、「つぁっ」という舌打ちをする。 その手には何故か、ピンク色の着ぐるみがあった。 「……おい、光。さっきやっと届いたんだよ。ほら、この豚の着ぐるみ、着ろよ」
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