橙の章

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ステージ台はあっさりと畳むことが出来、職人は機嫌をよくして大和に振り返った。 姿勢や立ち振る舞い、目元のシワからして50代から60代手前だろうか。快活な職人だった。 そして腰袋から2本の缶コーヒーを取り出し、1本を大和に差し出した。 「助かったよ、ちょうど一服しようと思ってよ。付き合え」 大和は周囲を見回してから、職人が持つ缶を見つめた。 職人は1人。他に仲間がいる様子もなかった。 「……何故2本も?」 「当たったんだ。自販機のルーレット。しかも今日で5回連続。ラッキーだろ?」 と職人は得意げに目を細めた。 大和は時計を見た。指定の時間まではまだ少し余裕があった。 二人はスタジアムの外周にあるテラススペースに出た。 エキスポの敷地と海が一望でき、点々とベンチが存在し、ポール状の灰皿に喫煙が出来るスペースもあった。 職人は見たことのないタバコを1本、大和に差し出し火をつけてやった。 続けて鈴状のアクセサリーを取り出し、大和の前で揺らした。 「ほら、ほええるくんだ。いいだろ」 「ほええるくん?」 それは虹色をしたクジラのキャラクターのストラップだった。  
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