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「おかえり。」
部室のドアを開けると、聞こえてくる声。
ここは自宅じゃないだろとか、お前は誰ポジションなんだとか、言いたいことは山程ある。けど、
「…ただいま。」
私は笑って答える。
向こうもニヤリと笑う。
それがどんなに幸せな時だったのか。
あの時が恋しい。
もう戻ることの出来ない、あの時が。
人は【今】しか生きられないという。
過去には戻れない。
未来は先取りできない。
人は【今】しか生きられないという。
ならば、人は【今】を後悔しないように生きてゆくしかない。
しかし、後悔せずに生きてゆける人などこの世には存在しない。
後悔を通して、人は様々なことを学ぶ。
裏を返せば、人は後悔しなければ何も学ぶことは出来ない。
「おかえり。」
彼の表情が、声が、脳裏に焼き付いて離れない。
私は、彼のことが。
失って初めて、大切なものであったことに気付く。
人は、愚かだ。
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