始まり

5/10
前へ
/26ページ
次へ
 倉橋先生に言われた通りの口上(呪文?)を言うと予想もしていないことが起きた。  首の無い石像、その宝玉があったであろう窪みが光り出したのだ。  竜夜、倉橋先生含めその場に居た者が全員石像に注目した。  するとどこからか声が聞こえてくる。 『貴様が儂の契約者か、貴様は何を求め、何を願う』  その声は低く渋い老人のような声だった。 (マジかよ、面白半分にしちゃ願ってもないハプニングだぜ…!俺の望みだ?そんなの、決まってる) 「強さだ!圧倒的な強さと、それに見合う敵だ!俺は楽しい戦いがしたい!燃えるような緊張と興奮が欲しい!」  竜夜が己の望みを告げると、先の声から返答が返ってくる。 『授けよう圧倒的力を、破壊と剥奪の闇の強さを。敵ならば自ずと現る、貴様がそれを望むなら、自然に巡り会う。楽しみにしていろ』  そう言うと竜夜の前に黒曜石のように輝く光が浮かんだ。  それは吸い寄せられるように竜夜の胸に吸収された。 (なにも、起こらねぇ…?)  目に見える変化がないことに疑問を持つが、直ぐに倉橋先生の言葉を思い出す。 (目に見える変化は後々顕れるだろうし、今は待つか…)  1人納得する竜夜の耳に倉橋先生の声が聞こえてくる。 「霧裂君いったいなにしたの!?今のはなに!?」  どうやら倉橋先生は自体が飲み込めてないようだ。 「なにって、儀式ですよ儀式。いや~面白半分にやってみましたけど、中々に面白いことが起きましたね」  予想以上のことが起き上機嫌な竜夜はいつになく口数が増える。 「あれ闇の力とか言ってましたし、やっぱこれ属性みたいなのあるんですね。あの石像壊れてたって言うし俺の儀式成功は結構イレギュラーだったりするんですか?」 「結構どころじゃないわよ…。これ、どう報告しようかしら…」  やはり相当のイレギュラーだったのか倉橋先生は頭を抱えてしゃがみ込む。  竜夜は上機嫌だからか軽い口調で言う。 「ありのまま報告すればいいんじゃないですか~?」  それが出来れば苦労しない。と倉橋先生は内心ため息をつく。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加