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紫乃は柊を優しく抱きしめながら
「他に変わったことは?」
と聞く。
柊は涙をゴシゴシと拭いながら
「新撰組という会津御預かりの浪士組が出来ました」
「新撰組・・・。頭は誰なの?」
「水戸藩の芹沢鴨と多磨出身の近藤勇です。なにやら剣の腕の立つ集団で周りからは壬生狼と呼ばれております。」
「!!!」
柊のその言葉に驚く紫乃。
「どうかしましたか?」
「....ううん。ちょっと気になってたことが見つかってさ」
「?」
「それよりも他には?」
「....えーっと若い男の子が芹沢の小姓として働いているくらいですかね」
その言葉に紫乃の瞳がキラっと光った。
「若い男の子?」
「はい。刀は下げておらず野良猫のような男の子です。たまにこの店にも顔を見せましてたしか・・・桐生櫂と言いました。人懐っこい性格の持ち主で.....」
「........櫂」
「お知り合いですか?」
「うん。ちょっと探してたんだ」
紫乃の表情はどこか嬉しそうな悲しそうなそんな表情だった。
「........紫乃様みたらし団子とお饅頭それ
ぞれ三袋あります。その探し人の方とお食べになってはいかがですか?」
柊の腕の中にはいつ用意したのか大量のみたらし団子とお饅頭の袋があった。
「柊、ありがとう」
紫乃は微笑みながらその包みを受け取る
「紫乃様、あまり危険なことには関わらないでください。壬生狼は人斬り集団と周囲から呼ばれております」
柊は心配そうに紫乃に言う。
「大丈夫だから。柊は自分の仕事をしていて。必ず帰ってくるから」
「........はい」
そうして紫乃は大きな風呂敷のような荷物を片手に店を出ていった 。
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