第4話

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「しらんわ! そんなん気にしとる場合とちゃうわ。そんなことより玄関にバリケード作ろやないか!」 「ああ」 「でもそうすると他の人も入ってこられませんよ?」 「そんなん知るか! 生き残るためじゃ!!」  ドンっと廊下の壁を近藤は叩き叫んだ。平山も同意見だ。村田には別に思う所があったが、今の彼等は興奮している。素直にそれに従うことにした。 「僕はあまり力仕事は苦手なんですけどね」  村田はそう零した。正面玄関は本館と同じくエントランスになっていてドアも大きいが、ちょっと部屋の方にいけば彫刻や重いテーブル、椅子は沢山ある。30分もかからず正面玄関をバリケードで封じ終え、彼等は屋敷の奥に消えた。  拓たちが訪れたのは、彼等が屋敷の奥に消えた直後だった。 「ダメだ。誰かがバリケード作ったんだな」  拓は無理に入ろうとせず、素直に諦めた。 「誰がこの中にいるんですかね?」  涼は腕輪の反応を見ながら呟く。今のところ、参加者たちの所在が分からない。大槻の話では参加者たちは神野が殺害される前に紫条家のほうに向かったらしい。 「とにかく今は誰かと合流しよう。危険だけど、本館の方に行こう」 「はい」  頷く涼。そしてそのことをサクラたちにも伝えようと思ったが、サクラと飛鳥の姿が見えない。なんとほんの少し目を放した隙に二人は庭の扉を乗り越え、中に入っていた。拓は本館に向かう旨伝えたが、サクラは「少しここ調べる。夜に本館で合流ね」と答え振り返らない。  拓はズボンの後ろに突っ込んでいたS&W M459をサクラのほうに投げた。 「飛鳥の護身用だ」 「やったぁー! ウチもついに銃装備っ!」  飛鳥は楽しそうに銃を持つ……がすぐに気付く。この銃は確か遠山の遺体の傍にあった銃で、弾が切れていたはずだ。飛鳥もそのことにすぐに気付いた。 「弾がコレないやないかっ!」 「当たり前だ。お前に弾の入った銃なんか渡せるか」と平然と答える拓。「もっともだ」と、にべも無く頷き同意するサクラ。 「弾のはいっとらん銃が護身用になるかいっ!」 「見せるだけで騙せる相手もいるって事よ、飛鳥」 拓の代わりにサクラがさらっと答え、ブイブイ文句を言う飛鳥を連れ庭の奥に消えていった。  涼は不安げに「いいんですか?」と尋ねる。拓は去っていくサクラを見ながら少し考えた後、「行こう」と涼を促した。
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