霙と霰

3/28
前へ
/28ページ
次へ
「へぇ……どんな人?」 「後ろを振り返らないでね…… 電柱の影から、こちらを見ている人よ。ずっと跡をつけているみたい――名前は蛇田魯粛(へびた・ろしょく)っていうの」 「ちょっ、なんで、転校初日につけられるのよ!?」  意識を半分、背後へと集中してみると、確かに人の気配とねちっこい視線を感じた。 「私だって分らないわよ……ねえ霙どうしたらいいかなぁ? 信介のこともあるのに、仕事がしづらいよ」 信介――とうとう懸賞金まで掛けられてしまった。私たちを疑い、関西へ逃亡。その顔色は酷く怯え、ちょっとだけ悲しくなった。 今でもその表情が頭に浮かぶと、冷凍庫に入れられたみたいに閉塞感に襲われ、心が凍えた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加