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今より1000年前のお話。人類はかつてないほどの栄華を極めていた。小さな争いこそあれど、大きな争いはなく、平和な世の中を人類は謳歌していた。 空を飛ぶのは飛行機と呼ばれる魔導機械。風の魔力を魔導鉱石に封じ込め、それを動力に空を移動する高度な乗り物である。大地に目を向ければ痩せた土地でも育つ穀物が収穫期を迎え、街に目を向ければ人々は何の恐れもなく楽しそうに行き来する。 そして英知を極めた人類がたどり着いてしまった神の領域。人類が踏み込んでいいはずがない世界。空を自由に飛ぶことができる機械を生み出した人間をもってして「その扉を開いてはいけない」と開けることをしなかった扉。 ドアノブを握った理由は単純な好奇心と大きすぎる自尊心の存在。 純粋な研究者は勢いのままそのドアノブを握り、そして-・・・・・ 扉を開いてからは来る日も来る日も研究に没頭した。花が咲き誇る美しい季節も、太陽が大地を熱く照らす季節も、木々が紅い衣装を纏う季節も、大地が白い雪に覆われる季節も・・・ 男は幼い頃から研究者に憧れ、大人になってようやくその夢を実現させた。しかしなれただけで待っていたのは書類整理や薬品の研究、男が描いていた研究者というものとは程遠かった。 だからこそ、一人前の研究者として認められるためにも目に見えた結果が欲しかったのだ。 「ついに成功したぞ・・・!」 ひとりの男が成し遂げてしまった研究。それは魔力の源であるクルシスのみで構成された「人間」を創りだすということ。生命の禁忌を破る、神への冒涜とも言える業。 「俺は成し遂げたんだ・・・!」
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