路地裏の店

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俺は水島リョウ。 大卒後、大手企業の戦士として最大限会社に貢献し、それなりに評価もされ 私生活では理想の彼女もでき、正に順風満帆な日々を送っていたーー しかし… 今日の気分は? と誰かに問われたら、こう答えるだろう。 「サイアク…」 だと。 『私達別れましょう…』 三年も付き合った彼女からの一方的な別離宣言。 理由は別な男に乗り換えた。 楽しいデートだったはずの夜から一転、俺は哀れな失恋男になった。 傷心のままフラフラと歩き続けていると、いつの間にか薄暗い路地裏に入り込んでいた。 帰るか… 仕方なく駅に向かうため踵を返すと、視線の端に地味な立て看板が映る。 『…イノセント…』 それは小さなビルの地下に続く階段の前に、ぽつんと置かれていた。 『ショットバーか…。こんな店、あったかな?』 華やかな表通りしか知らない俺は、なぜだか新鮮さを覚え、 興味半分、やけくそ半分、その怪しげな店に足を向けていた。
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