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黄色い照明が照らすカウンター席で、お互いの視線が重なった。
「……」
やがて僅かに微笑んで、その青年は席を立つ。
何かアクションを起こすのかと、俺は身構えた。
だが、何もないまま、俺の背後を通りすぎ、青年は会計を終えて店を出て行った。
「なあ、今の客…」
カオリに似ていたからなのか、単なる好奇心からなのか、俺はバーテン兼マスターに尋ねた。
「ああ、あのお客さんなら最近毎日来ますね」
「名前は?」
「さぁ…無口な方でほとんど話さないまま帰ってしまうんですよ」
「明日も来るかな?」
「と思いますよ」
俺を振った女に似た二十代前半位の男…
彼が飲んでいたのは、『ブルー・ムーン』というすみれ色がかったカクテルだった。
叶わない恋、出来ない相談などの意味がある
彼も『訳あり』なのかな…
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