路地裏の店

4/12
前へ
/385ページ
次へ
黄色い照明が照らすカウンター席で、お互いの視線が重なった。 「……」 やがて僅かに微笑んで、その青年は席を立つ。 何かアクションを起こすのかと、俺は身構えた。 だが、何もないまま、俺の背後を通りすぎ、青年は会計を終えて店を出て行った。 「なあ、今の客…」 カオリに似ていたからなのか、単なる好奇心からなのか、俺はバーテン兼マスターに尋ねた。 「ああ、あのお客さんなら最近毎日来ますね」 「名前は?」 「さぁ…無口な方でほとんど話さないまま帰ってしまうんですよ」 「明日も来るかな?」 「と思いますよ」 俺を振った女に似た二十代前半位の男… 彼が飲んでいたのは、『ブルー・ムーン』というすみれ色がかったカクテルだった。 叶わない恋、出来ない相談などの意味がある 彼も『訳あり』なのかな…
/385ページ

最初のコメントを投稿しよう!

496人が本棚に入れています
本棚に追加