知らない横顔。

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   慌ててメグの胸から逃れると、あたしはさっさっと乱れた髪を直す。  ……見ると、浅海先生のものらしいジャージを持った“坂田先生”。 「あ、仁志くん。涼太が朱音をいいように使おうとしてるの。何とか言ってやって」  メグはあっけらかんと涼太くんを売り渡す。  坂田先生は何も言わずにちら……と涼太くんを見た。 「えっ、俺そんなことしてないし!」 「嘘、俺の弁当作れって言った!」 「そこだけ切り取ってもの言うな、バカ女」  すると、坂田先生の大きな手が涼太くんの頭をガシッと掴んで引き寄せる。  坂田先生は涼太くん程がっちりしてはいないけど背が高くて、それなりにバランスよく筋肉のついた──締まった身体つき、っていうのかな。  そんなだから、男の人としての雰囲気は涼太くんに全然負けてない。 「涼太」  坂田先生は、涼太くんの耳元に口唇を寄せると、囁くように言う。その目は、笑ってなかった。 「女の子にそういうものの言い方するのはやめろって、何度言ったらお前は覚えるの」 「いて、いててて、やめて仁志くん」 「仁志くんじゃない。“坂田先生”と呼べ」 「ご、ごめんなさい坂田先生、気をつけてますってば!」 .
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