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その隣にいる男の人を見て、ドキッと心臓が跳ねた。
……坂田、先生……。
未だにその響きに馴染めなくて、無意識に口を動かす。卵焼きの味なんてしなかった。
ごっくんと飲み干すと、メグは隣で呆れながらまたハンバーガーを貪る。
「あれ、また仕事そっちのけで遊ぶよ。バカみたい」
視線を落としてコーラをズズズ、と飲むメグの代わりに、あたしは浅海先生に目をやる。
遊んでいる男子生徒に誘われて、浅海先生は今にも窓から飛び出しそうだった。
浅海先生は一緒にいた彼を振り返り、着ているジャージの上を脱いでポンと渡してしまう。
え、と思った瞬間、浅海先生はヒラリと窓枠を飛び越えて校庭まで出てしまった。さすが体育教師というか何というか、軽い身のこなしだ。
「ホラね。昼休み、いっつもああなんだから。また仁志くん、荷物持ち」
「へっ!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
だって、今、“仁志くん”って……。
あたしがきょとんとしてメグを見ていると、彼女は「ん?」とまばたきをする。
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