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「朱音のとこ、あの人の授業あるでしょ? 仁志くん」
「うん、そうだけど……でも、名前……」
「ああ、ウチのクラスじゃそう呼ばれてるよ。そう呼んだら怒るけど」
「ああ……」
みんなそうなのだと知って、ちょっとだけほっとした。
さっきの窓枠に視線を戻すと、彼が薄い笑みを浮かべながら校庭に出て行った浅海先生を見ていた。
……その笑顔は、この9年全然変わってない。それでも、昔とは立場が全然違って。
メグは“仁志くん”って屈託なく呼んでるけど、私は呼べなくなって。
その理由がよく判らなくて、残ったもう一切れの卵焼きを味気なく口に入れた。
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