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「そんなの、いるわけないでしょう」
「あら、そう。その気にさえなれば途切れたりしないでしょうに、あなたなら」
少し馬鹿にするようなその言葉に、むっとする。
「……消耗品じゃないでしょう、そういうのは」
「まあ、そうだけど」
街灯の下で、流華さんはガードレールにもたれるようにして座った。
そこに落ち着くようにして、彼女は煙草を取り出して火を点ける。
「まだ、忘れられない?」
ふうと紫の煙を吐き出しながら、流華さんは俺を見る。その瞳に、アルコールの酔いの気配は既になかった。
「流華さんには、関係ないよ」
「あら、関係ならあるでしょ。……昔の女っていうのは、男にとっては何かと便利なもののはずでしょ?」
「あなたが独り身ならね」
「残念ながら、今日のあたしは独り身なの」
携帯の時計を見ながら、流華さんは笑った。
「またそういうことを……」
「本当よ。あたし達、土曜日だけはお互いに絶対干渉しないの。夫婦生活を円満に回していくために、独身に戻る。今日は、そういう日」
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