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さらりと言い放った流華さんに、絶句する。
たった今、再会したところだぞ。なのに、何でそういう夫婦のルールをいきなり口にするんだ。
「……俺には関係ないじゃない。そんなの」
確かに、数十分前から土曜日だけど。
流華さんの遊びに、俺が付き合う必要なんてなかった。
彼女の手を放してすぐの頃ならいざ知らず、あれから何年経ってると思ってるんだ。
「それとも、いつもこんなことしてるの」
流華さんの瞳が、不機嫌そうに細められる。
酒の席で偶然昔の男に出会って芽生えた火遊びの心が萎えてしまえばいいと思って、そう言った。
「馬鹿にしないで。いくら干渉しないって言ったって、あたしがしてるのは結婚よ。セックスまで自由になるわけないでしょ」
「……だったら、その物欲しそうな目、やめようよ。誤解されるよ」
「誰彼構わずじっとこんなふうに見るわけないでしょ。……あなただからよ」
裸足ですっと立ち上がった流華さんは、俺の襟首をぐいっと掴むとそのまま引き寄せ、口唇を重ねてきた。
……先月の飲み会で、罰ゲームで泥酔した浅海さんにしこたま舌を挿れられて以来。
そんなどうでもいいことを思い出して、ものすごく萎えてしまった。
女の子とはいつが最後だったっけ、なんてもう思い出したくもないけれど。
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