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俺を崖から突き落とすかのような勢いで迫ったくせに、もう許して、なんてすすり泣く流華さんを見下ろしながら、やっぱり罪悪感の沸いてこない自分に自分で呆れた。
人妻。彼女をかたどる何もかもが、よその男のもの。
流華さんが俺に手を伸ばしたのは、彼女自身満足できていないからだということはすぐに判った。
俺を放っておけないのと同時に、自分も気持ちいいことをしたい。
ずるくて汚い、女の打算。
でも、それを隠さないのが流華さんの長所でもあり、短所でもあって……。
それに俺が縋ってしまった。それこそ、見境なく。
したかったのは、女と抱き合うことなんかじゃない。
するべきでないことをわざわざして、その責めを受けたかったんだ。
あの時の痛みが想い出にならないように、薄らいでしまわないように。
何もかもが崩れて行った、あの冬の始まりの日から続くぬるま湯のような時間。
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