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虚無感が俺の真上に漂うのをじっと見つめながら、煙草に火を点ける。
隣で、起き上がれないでいる流華さんがクスッと笑った。
「なあに、その煙草。教師のくせに嫌味」
のろ……と顔ごと視線を流してやると、流華さんはあどけない笑みを浮かべ俺を見ていた。手元の煙草に視線を落とす。
ジャックポット・スリム・ゴールド。
箱も煙草のフィルター部分も金色に輝くこの煙草が、俺の目下の愛煙物だった。
まあ、確かに金色のフィルターは派手だ。
若い高校教師が咥えるには確かに嫌味かも知れない。
そうそう人前で吸うことなどないから、あまり気にしていなかったけど。
肩を竦めて笑った。
すると流華さんはごろりと仰向けになり、全身で溜め息をつく。
「あー……久しぶりにあんなにいっぱいいったぁ……」
何が、と訊ねるのはあまりにも野暮だった。俺がしたことなんだから。
「欲しがる人なのは知ってたけど……そんなに、足りないの」
「勘違いしないでね。いいのよ、うちの人」
「別に、そんなことで優越感持ちたいわけじゃないからどっちでもいいよ」
「でも……」
言いかけて、流華さんは口ごもる。そのまま俺に背を向け、落ち込んだような声で言った。
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