【罪は昏い深海へ。】

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   Yoshii Lovinsonの“CALL ME”。  いつコンポに入れたか正直覚えてないけど、沈んでいくようなイントロが気持ちよくて、そのまま目を閉じて聴き入る。  サビの盛り上がりで、我知らず涙がこぼれた。  ……俺、何してるんだろう。  流華さんに対して、まったく何も感じないわけじゃない。  昔好きだった女の人だし、同じ学校で働いている同世代の女性よりよっぽど特別だ。  だけど、これは愛じゃない。間違いなく。  こういうことに対して、俺は嫌悪を抱いていたはずだった。  どんな理由があろうとも、想いがないのに身体だけ繋いでも、虚しいだけだと。  それで一度、俺は大きな間違いを犯した。  それに、その時とは決定的に状況が違う。  その時は死にたがっていた彼女の命がかかっていた。  今夜は、違う。  それなのに、流華さんに縋った。  避けられたはずの間違いを、あえて自分で選んだ理由は──流華さんに言い当てられた通りだったけど。  自分が痛い想いをしたいがために、俺は彼女を利用した。  唯一と思ったものを手放してから、俺の身体はまるで抜け殻だ。 .
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