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言われて、“アンジェリーナ・ジョリー”などと書かれたひどい調査票を思い出す。
「ええ……でもあれはメグにも責任が……」
「だろ。そう言ったら、“何で電話くらいしてくれなかったんだ”って怒鳴られて。6限目の俺の授業出ないでそのまま帰っちまった。馬鹿が」
「電話?」
訊き返すと、浅海先生は黒いジャージのポケットから携帯を取り出し、プラプラと私に見せた。
「担任、初めてだったからちょっと張り切っちゃってさ。4月の紹介の時に“困ったらかけてこい!”なんて俺、黒板にケー番書いちゃったわけ。教頭には怒られたけど。だから俺のクラスのヤツは全員俺のナンバー知ってるし、かけてきたやつなら俺も知ってる、っていう」
「メグ、かけてきたんですか」
「うん。それは教頭にはバレてないけど」
先生の携帯の番号か……。
と、私はふと自分がひどく誤解しているような気になってきた。
メグは、浅海先生を嫌っているのかと思ってた。
だけど、わざわざ嫌いな人に自分の携帯の番号なんて教えるだろうか?
メグのやりそうなイタズラなら、非通知でやればいいことだし……。
あれ……?
メグ、浅海先生のこと嫌いじゃないんだ……。
そういえば、いつも冗談ぽく言われるから気にしてなかったけど。
メグは浅海先生のことを天敵、みたいに言いながらも、“嫌い”だなんて一度も言ってないような気がする。
それに、浅海先生を見つけるのはいつもメグだ。
私の勘違い……?
と、いうか。
浅海先生はメグがもう帰ったと思ってるけど、じゃあさっき音楽室の前に私を連れて行った彼女は何なんだ。
メグは1時間も校内のどこかで時間を潰していた、ってこと……?
メグ、さっきまでいましたよ……と言いかけて、また私は迷った。
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