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……だけど、担任の先生から逃げても、高校生としては何もいいことなどない。
いくらメグが生徒会長でも、こんなこと続けてたら受験にだって就職にだって……。
「せ・り・ざ・わ」
「わっ、びっくりした……」
考えている間にいつの間にか浅海先生が私の前に立っていた。
浅海先生はニヤリと笑うと、ずずいと私の顔を覗き込む。
「この百面相。さっきから色々考えてるの、全部顔に出てるぞ」
「えっ」
思わず顔を両手で押さえると、浅海先生はくつくつと声を出して笑う。
「お前なあ、友達売りたくなかったら、まずポーカーフェイスから覚えろ。まあ、無理だろうけど」
「そ、そんな……」
しょぼんと肩を落とすと、浅海先生は通路を挟んだ向かいの席に腰を下ろした。
ぐび、とコーヒーを飲む音がする。豪快だ。
「今、何言いかけた?」
浅海先生の表情は、とっても柔らかいものだった。
先生ー、なんて言って甘えていったら、がっしりと受け止めてくれそうな包容力も感じる。けど。
その裏にある威圧感というか、絶対的な支配者のオーラを感じるのは、私だけだろうか……。
白旗を上げることにした。
売るつもりはないけど、とりあえず勝てない。メグ、ごめん。
「……メグ、帰ってないですよ。ついさっきまで私と一緒にいました」
「なにぃ?」
笑っていた浅海先生の眉が、ぴくりとつり上がる。
すると浅海先生は怒りの形相で携帯を取り出した。どうするつもりかと成り行きを見守っていると、浅海先生は電話をかけ始めるでもなく、液晶画面に触れて何か操作をしている。
そうして、しばらく黙っていると。
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