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「……マジであいつ、校内にいやがる」
ボソリ、と浅海先生が呟いた。
一瞬意味が判らなくて眉根を寄せると、浅海先生はすっくと立ち上がる。
「おい、芹沢。一緒に来い」
「は……?」
「お前から聞いたって言わないと、一色にバレるだろうが」
何がですか、とは聞きづらい。
もちろんメグがまだ校内にいることなんだろうけど、私は今携帯で浅海先生が何をしたのか非常に気になるわけで。
「さ、行くぞ」
「えええええ!?」
浅海先生は、私の手を取りずんずんと歩き出す。
手の中のミルクティーの缶がタプタプ揺れて、こぼれないように慌てて水平にした。
「ま、ままま待って浅海先生!」
「いいから」
「いいからじゃないですっ!」
帰宅部の下校ラッシュはもう過ぎているとはいえ、校内にはまだまだたくさん人がいる。
私みたいな地味っ子が、背の高いジャージ姿の浅海先生に引っ張られて歩いてるところなんて、何事かと思われるじゃないか。
「あさみーん、バイバーイ」
「おう、気をつけて帰れ。受験生なんだから、うっかりナンパされんなよ」
「やだー、あさみんじゃあるまいし。じゃあねー」
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