枯れ果てたいくらい。

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   他人の努力が水の泡になる、その原因が自分だった、なんて状況はごめんだった。  半ば妄想のようなあたしのその決断を聞いて、のんきな母は「だったら4年制の大学に行けばよかったのに」と溜め息をついた。  あたしだってそう思ったけど、高校3年生の時には、また4年も勉強をするのかと思ったらぞっとしたんだもの。  後悔というのは、そんなふうに何度思い知ろうと先には立ってくれないものだった。  あたし──織部陽香の生まれた家は、旧家と言うほどでもないけど、他人から見ればおそらくそう呼ばれると思う。  18歳上の兄・克行が早くに家を出てしまったため、あたしは実質跡取り娘、ということになる。  けれど本家というものはもっと田舎に存在しているし、その本家の次男坊である父親は、兄貴やあたしに家督という古臭いものを強制するつもりはないらしかった。  最近面倒なことといえば、兄嫁である美園さんが次々とお見合いの話を持ってくるくらいで。そのお見合いにしても、断る方便だけがうまくなっていく。  最近あたしは、そんなふうに自分以外のものに時間を取られ、自分が削り取られていくのが大人なのだと感じていた。 .
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