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「あのう……」
本棚の下の引き出しを開いて在庫の整理をしていたあたしのそばに、近くの学校の制服を着た女子高生がおずおずとやってくる。
女子高生は、手に持っている携帯電話とあたしを交互に見ていた。
茶髪にフルメイク。
そう引っ込み思案な感じには見えないのに。あたしはその女子高生の妙に奥ゆかしげな態度が気になった。
「何か、お探しですか？」
あたしは胸元の名札を意識しながら、自然な笑顔を作って立ち上がった。
名札には、名前の上に“チーフ”と書かれている。
女子高生は困ったようにあたしを見上げながら、きょろきょろと辺りを見回した。
首を傾げると、女子高生はととと……ともう少しそばまでやってきて、携帯電話の液晶を開いて見せてくれる。
「こういうの、ありますか？」
高校生が手に取るにはそぐわないものでも欲しがっているのだろうか、と思った。
自分が高校生だった頃を振り返れば、読んではいけない、なんて大人が心配して止めるようなものはほとんどないように思う。
読書少女だったおかげで、あたしはけっこう耳年増だった。
が、売るとなれば話は別だ。
１８歳未満の青少年に販売してはいけない書籍というものがあるんだから。
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