枯れ果てたいくらい。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「やだ、雨……」  レジを済ませた女性が、自動ドアの外に出てからそう呟いたのを聞いて顔を上げた。  見ると、外は確かに雨だった。呟いた女性は折り畳み傘を取り出して、事なきを得たようだ。  そういえばロッカーに傘を入れてあったということを思い出して、息をつく。  薄暗くなった外の景色を見ながら、そういえばそろそろ母校の文化祭の時期だな、ということを思い出した。  思い出しはしたものの、あたしは卒業してから一度も高校に足を運んではいなかった。  幼馴染みの佐久間収とその彼女に何度も誘われてはいるけど。  探そうと思えば、理由らしいものはいくつも見つかるのだろう。  けれど、あえてそれを穿り返すのは嫌だった。  店内を見回すと、そろそろ客足が引いて行く頃なせいもあって静かだ。  閉店まで、あと30分。そろそろレジを締める準備だけしておくか……と数回瞬きをして気持ちを切り替えつつ、あたしは今日回収した注文カードを書籍の種類別にまとめ始めた。  すると、店内には誰もいないと思っていたのに、文庫コーナーからひょこ、と暗めの茶髪の頭が現れる。 .
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