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そして俺も、足りない痛みを悔やみながら、ただ孤独に自分の日々を回していくべきだ。
誰の手を借りることも望むこともなく、ただ叶わぬ恋に胸を焦がしていればいい。
──と、また陽香に思考が回帰する自分の勝手さに、ほとほと呆れる。
携帯に手を伸ばすと、まだ午前4時過ぎだった。明け方というには早すぎる。
今が真夏であるなら、もう少し待てば陽が昇るから起きていようかな、という気にもなるけど。
陽が昇る時間の違いだけで、もう少し眠っていよう……という気になるのだから、季節というのは侮れない。
布団を頭まで被り直しながら、夜明け前の冷気にぶるっと震えた。
明け方に見る夢は、淫夢であることが多い。
今から眠ったら、さっきの続きが見られるかな──とどうしようもないことを考えながら、再び忍び寄ってきた眠気にとろとろと意識を任せる。
眠りに落ちる一瞬前、夜が明ける前が一番暗く寒いのだ、という言葉を思い出した。
いつどこで誰に聞いたかは、もう忘れてしまったけれど。
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