第8話 “若”と“苦”という字は似ている。

詐欺師は盗人ではない。

「あ、いえ。何も問題はございませんでした。滞りなく発注完了いたしまして、来週の半ばには店頭に１組届く予定となっております。そのことをお伝え……」

　必死で繰り出した営業トークを、それ以上続けられなくなってしまった。

　浅海さんがククク……と笑い出したからだ。

　さっきの不機嫌はどこへやら、最大ボリュームで爆笑してしまいそうな笑いを、浅海さんはかみ殺している。

『織部って。あれ？　って思ったけど──ハルたんだろ？　その声』

　──終わった。

　あたしは受話器を持ったまま、もう一度その場に崩れ落ちた。

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