詐欺師は盗人ではない。

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   隣町の図書館は、あたしが中学生の頃からよく通っている場所だ。  そう大きな施設ではないけど、新刊の仕入れがとても早いのだ。  仕入れの担当に流行に敏感な人間でもいるのか、ライトノベルやケータイ小説などもたくさん置いてある。  その図書館の入り口の自動ドアをくぐると、すぐにカウンターが見える。  そこから左右に大人向けと子ども向けに分かれていて、あたしが向かうのはだいたい前者の方だった。  あたしが気に入っているのは、大人向けのエリアにある天井まで届きそうな大きなガラス窓。  その向こうは、利用者が休憩するためのテラスになっているのだ。  あたしはテラスそのものではなく、そこを見渡せる席で本を読むのが好きだった。 「見かけたってこと? あたしを、あそこで?」  あたしが虹原さんを見上げると、彼はうんと頷いた。 「図書館に若い女っていうのがちょっと珍しくて。何度か」 「……気が付かなかった」  見られていたのだと判ると、急に恥ずかしくなる。  確かにあの図書館に、自分と同じくらいの女性の利用客はあまりいない。  知らない女同士というのは、ある種独特の緊張感があるものだ。同世代の女性がいれば、相手にもよるが手に取る本にまで気を遣ってしまうことがあるような気がしていた。  そういうものが苦手なあたしは、何も意識せず心地よい孤立感の中で読書ができるあの図書館が気に入っているのだ。 .
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