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でも、だからと言って変態呼ばわりって……。
あたしの思考がそこに至ったことを表情から読み取ったのか、虹原さんはくつくつと肩を揺らして笑った。
「気付いてないの。あんた、夢中で本読みながら目潤ませて、ブルッて全身で震えてんの」
「ええ……っ!?」
「この前なんか、よく判ってないじいさんがびっくりしてまじまじ後ろから見てた」
「嘘、全然そんなこと……」
気付いてなかった……と言おうとしたあたしの顔を、ふいに虹原さんがすぐそばで覗き込む。
「……中身の濃そうな本は借りて帰れよ。ああいうのは、エロいから」
「……!」
あたしの呼吸が一瞬止まったのを見て、虹原さんは満足げにニッと笑った。
いやらしいことなど何も思い描いていませんよ、という子どものような悪戯っぽい顔をして。
頬が熱くなるのを感じて、慌てて両手で顔を覆った。
「ただでさえ本好きな人間は妄想力豊かなんだから。そのうちチカンに遭うぞ」
「……い、今、遭ってるようなものじゃない……!」
「失敬な。こういうのは忠告って言うんだよ。人がいいからついおせっかい焼いちゃうの、俺」
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