詐欺師は盗人ではない。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「オリちゃん。この発注お願いできるかな」  出勤し、エプロンをつけてまだ薄暗い店内に顔を覗かせると、小石川さんが疲れた顔をしてメモを差し出してきた。  メモには、近所の高校の2年生用の教科書を1組揃えて欲しいとある。 「判りました。でも、この時期に1組だけ発注って……」 「転校生らしいよ。この時期に」  納得しながらエプロンのポケットにメモを入れる。  そのままあたしは小石川さんに名札について話した。  しばらく考えてみたけど、やはり話しておいた方がいいといいう結論に至った。  すると彼は今まで気が付きもしなかった、という顔をして、「店内のことだから、明日から使えるよう今日中に奥で作り直す」と答えた。  チカンについては小石川さんも一瞬難しい顔をしたけど、危なさそうな売り場はレジから見えることだし……と同じ結論に至ったらしく、近隣の学校や警察から何かあるまでは通常通りでいいと言った。  後からやってくるバイトの子にも、口頭で注意だけしておこう……ということになった。 .
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