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昼を過ぎてから、頼まれていた教科書の出版社数社に連絡を入れ、次の週の半ば頃には教科書がちゃんと揃う、ということを確認した。
そろそろ授業は終わっている時間だろうし、その旨一応連絡しておこう……と受話器を持ち上げ、そこで初めてメモをよく確認した。
──連絡は2年3組担任のアサミさんへ!
小石川さんの汚い走り書きを見て、あたしは首を傾げる。
アサミさん、とは間違いなく苗字だろうか。
「店長ー!」
「ハーイ」
「この、アサミ先生って女性の方ですかー?」
「ううん、男の人だよー。ちゃんと、苗字!」
おそらくパソコンの前で名札のデザインに無駄に拘っているのであろう小石川さんは、間延びした声でそう返してくれる。
あたしはほっとして、書かれている電話番号に発信した。
発信音が鳴り出した時、頭にふっと昔の知り合いの顔が過ぎる。
「……まさかね」
すると、程なくして学校の事務員が電話に出た。
あたしはそこで書店の店員であることを告げ、教科書の発注のことでアサミ先生に報告があるので呼び出して欲しいことを伝えた。
愛想のいい事務員は朗らかに快諾し、音楽が流れ出す。
1分程待ったところで、ガチャリと受話器の上がる音がした。
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