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一色の身体からは何か洗脳系のオーラでも出ているのか、放っておいたらもう一度食い下がってきそうだった女生徒は、何度もぺこぺこと頭を下げ準備室から逃げるようにして出て行ってしまった。
茶番を終えた一色は近くにもう誰もいないことを確認して、ふうと息をつく。
「駄目じゃん、仁志くん。1人で来た女生徒は入れない主義でしょ」
「……来たのが一色と芹沢で助かったよ。ちょっと考え事してて」
と言いながら、いつも1人でここにやってくるお前は何なんだ、と一色をジトリと見つめる。
彼女の目当ては俺じゃないからいいんだけど。
「……で、どうしたの。何か用?」
すると、それまで薬品棚の前で黙って見守っていた朱音ちゃんが、口唇を尖らせる。
「謝りに来たの。仁志くんに黙って勝手なことしちゃったから……」
「え? あ、そうか……うん。涼太からだいたい聞いたよ」
「ごめんなさい、仁志くん……ほんとに、ごめんなさい……」
……?
朱音ちゃんにまとわる違和感に、俺は首を傾げた。
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