【それを人は運命と呼ぶ。】

13/20
前へ
/40ページ
次へ
  「遠かろうが近かろうが、会いたいって思ってたら引き寄せ合って会ってしまうもんじゃないかって、最近思うわけだ」  視線を俺から献花に移すと、浅海さんは茫洋とした様子で続ける。 「まあ、狭い学校の中での話だけど。愛美を意識し始めた時から、やたらアイツとばったり会うことが増えてな」 「……」 「お前も数年教師やってりゃ、判るだろ。どっちも毎日学校に来てるのに、一度もまともに顔を合わせないまま、卒業していなくなる生徒だっていること」 「……まあ、何となく」 「愛美は、そういうのとは逆で。あっちも俺の顔見る度びっくりして。示し合わせたり待ち合わせたりなんて、一度もなかった。ただお互い、死ぬ程意識してただけで」 「……俺が陽香を避けようとしてた、ってこと?」 「避けようとかじゃないかも知れないけど、でも──合わせる顔がない、くらいは思ってただろ」  浅海さんの言葉に、俺はしばらく考えて──黙って頷いた。  陽香を一番に持ってこれずに、結果裏切るようなことをして、傷付けて泣かせて悲しませて……。  ──陽香が冷静になって結論を出す前に、俺は逃げた。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

201人が本棚に入れています
本棚に追加