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さっき思わず涙をこぼしてしまったせいで、目の裏側がじくりと痛む。
ちゃんと、陽香に選び直してもらえるとは思わなかったから。
俺がどんな男で何をしても愛してる、なんて陽香が赦してくれるとは思えなかったから。
「お前さ。別れる時、どうしてちゃんと話してやらなかったんだよ」
「え?」
「だって、絶好調そのもので、幸せそうにしてたじゃん。お前も、ハルたんも。そりゃ、他の女と寝たことは普通、破局の理由としちゃ充分すぎるけど。でも、お前のやったことは結果人助けじゃん?」
「そんな綺麗なものじゃ……」
「じゃあ、ここで亡くなった斉木くん……だっけ? そいつの女、欲しかったの? じっと上から下まで舐めるように眺めて、この女の中にぶち込みたい、ってしっかり欲情してからやったのか?」
「……言葉を選ばない人だな」
「誰も聞いてないし、聞いてるとしても、斉木くんくらいじゃないの」
斉木のことを引き合いに出されて、胸がズキンと痛んだ。
浅海さんは、ちゃんと判って言っている。
俺がここに立つ度、あの大雨の夜したことを悔やんでいることを。
「……そんなわけないじゃないですか。友達の女にそんなこと、思うはずないでしょう……」
こんなこと言いたくないのに、言わされてしまう。
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