201人が本棚に入れています
本棚に追加
心当たりなら、この18年くらいずっと心の底に澱のように沈んでる。
だけど、それを口にすることはできなかった。
浅海さんはハァ……と大きく溜め息をつくと、俺を見て肩を竦める。
「なんでこんなこと言う気になったか、言ってもいい?」
「……? ええ」
「今日は、彼の月命日だろ」
「はあ……」
「お前、明日誕生日じゃん」
「……ああ……」
頭からすっかり抜けていた。
「そんな日に、7年ぶりにハルたんの姿を見かけたってのは──お前、考え直す時期なのかもって、そう思わない?」
「……」
浅海さんの言わんとすることは、それだけで何となく判った。
やんわりと、何を咎められているのか判らないでもない。
だけどこれは俺が選んだ俺の罰で──生き方だ。
陽香の存在を犠牲にしてまで、考え直すことなんて──。
目の前の雨の音に重なって、記憶の雨の音が俺の中で響く。
それがいつのものなのか、弱った今の俺にはよく判らなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!