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深夜近くなって部屋に帰り着くと、コートを脱いだところで携帯が鳴った。
2秒で止まったそれは、メール着信音。
コートをハンガーに掛け、カーテンを閉める。
チリン……といつものように風鈴が鳴って、胸がずくんと疼いた。
いつもはその音色の確認をするだけして、溜め息が漏れるんだけど。
今日は──ずっと重く深く、甘さを帯びた痛みが襲ってくる。
車の中から陽香の姿と顔をほんの一瞬、確かめただけだ。
それなのに、身体中が熱くなってしまった。
……可愛かったな……。
どこか腑抜けた思考回路で、そんなことを思ってしまった。
でも、顔を見てしまうと、つい欲が出る。
叶うべくもないけど、声が聴きたい……。
何度も今日の記憶と昔の記憶を思い描きながら、彼女の面影が昔のままだったことに、安堵してしまう。
誰かと、幸せに過ごしているのかな。あれから、7年だもんな。
今日ふざけながら浅海さんが放った言葉が、今頃になってじくじくと突き刺さる。
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