【それを人は運命と呼ぶ。】

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   ワンワンと鳴り響く、蝉の声。  ハッと汗だくで目を覚ますと、それがアラームの音だと気付いた。  前の晩、それを意識して眠るわけではないのに、毎月8日はどうしてもそうやって目が覚めるんだ。 “ああ、今日は8日だ”と思いながら、憂鬱を背負って起き上がる。  アラームを止めて、ジワリと滲んだ額の汗を手のひらで拭った。  これはシャワーを浴びないと、絶対汗臭い。  もう木枯らし吹きすさぶ11月だというのに、容赦のない汗はこめかみから一気に首筋まで流れ落ちた。  いつもなら朝の中でしばらくまどろんでうだうだしてから起きるんだけど、その時間をシャワーに当てることにして、さっと立ち上がる。 .
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