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「仁志くん、大丈夫か? 最近、顔色悪いけど」
「ああ、ちょっと、寝不足かな……」
あの妙なメールが来てから、数日。
俺は中居の家には行っていないし、まだ流華さんにも会っていなかった。
何もしていないから動きがないのかも知れない。
明日の土曜日、流華さんと会ってみてどうなるか──それでまた何か動きがあるかどうか。
まずはそれを確かめてみることにしようと、昨夜は考えていた。
そうしたら、あまり眠れなかった。
「それよりお前こそ大丈夫か」
俺が訊ねると、涼太は「へ?」と間の抜けた返事をした。
返事と同じように、幸せそうに腑抜けた涼太の額に軽くデコピンを食らわしてやると、やつは甘んじてそれを受けた。
「これから受験だっていうのに、恋愛なんて始めて」
苦笑しながらそう言ってやると、涼太はふへへ、と得意げに胸を張って笑った。
「今から必死に足掻かなきゃなんないような生活してねーもん」
「それもそうか」
うちはそう強豪校というわけではないけれど、野球部の顧問は鬼と呼ばれるくらい厳しい。
プレイ態度や生活態度だけでなく、成績面でも。
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