【投げられた賽の行方。】

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  「で、何の用」 「それが、言いにくいんだけど……」  涼太は辺りを見渡すと、近くに誰もいないことを確認してからもう一歩、俺に身を寄せた。 「ごめん、仁志くん。朱音に色々ばれちゃった」 「は?」 「仁志くんが今付き合ってる女のこととか」  そう切り出された瞬間、俺は涼太を見ながら眉根を寄せた。  俺のその顔を見た途端、涼太は眉尻を下げる。  謝ってくるあたり、充分まずいというか芳しくないと理解している──ということだけど。 「でね」 「何」  返事から若干俺の苛立ちが漏れ出たようで、涼太の瞳から力がなくなる。 「ちょっと、相手の人に迷惑かけちゃったかも」 「は?」 「いやね、朱音、仁志くんが初恋じゃん。あいつずっとそれこじらせてて」  こじらせる、とは言い得て妙な。涼太の語彙力に感心しながら頷いていると、彼は思いも寄らない話を始めた。 「話すと長いんだけど、朱音と仁志くんの相手がちょっと対決みたいなこと、しちまって」 「何、それ」  思わず目を丸くした。  流華さんとの関係を隠すのは──彼女が結婚している女性である以上、基本だと思う。  浅海さんがそれを知っているのは、先輩であり友人であるからというのと、流華さんと再会した時に、その場にいたからだ。  後から“あの女なんだったんだよ”としつこく訊かれて──馬鹿正直に話さざるを得なかった。 .
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