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髪を乾かして整え、コーヒーを淹れている間に焼いたトーストをかじった。
花屋の章子ちゃんは有能な店員さんで、近頃は予約を入れなくても斉木の花を用意してくれている。
ちょっとしたひと手間が省けることに感謝しつつ、時計を見上げるとそろそろこの部屋を出る時間になっていた。
シャワーのおかげで少し火照る身体を持て余しつつ、俺は一応帰りのためのコートを手に取り、部屋の隅に掛けていたものに目を留めた。
──ピンクのロングカーディガン。
俺に、これを着る資格はまだない。
そう思いつつも、この間から冷え込む日には必ず白衣やコートの下に羽織っていた。
寒いから──というのは口実で、実際はもっと女々しい理由だけど。
風鈴と、カーディガン。
このふたつがなくなったら、俺は多分死ぬような気がする。
それは決して、大げさなことじゃなくて。
俺に許されてるのは、このふたつだけな気がして仕方がないから。
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